以前、こちらの記事では効果的な模写のやり方について説明しました。
模写には紙と鉛筆を使って行うアナログ模写と、PCやペンタブレットなどを使って行うデジタル模写があります。同じ模写ではありますが、アナログ、デジタルそれぞれに特徴があり、効果も違います。
特にデジタル模写は練習量を増やしたり、練習の記録を管理したりすることに長所があります。ですから、自分の練習を振り返りながら急激に画力を向上したい人におすすめできる方法と言えます。
今回はデジタル模写にスポットをあてて、デジタル模写をやったことがない、あるいはこれからデジタル模写を始めようと思っている方へ向けて、やり方とメリット・デメリットについて紹介していきます。
デジタル模写のメリット
デジタル作画の練習になる
まず、当然ですがデジタルでイラストを制作する練習になります。デジタル作画をメインにしていきたい人には、アナログ模写よりもデジタル模写をおすすめします。
練習量を増やせる
デジタル模写は練習スピードが早いので、同じ時間当たりの練習量が増えることになります。ですから、アナログに比べて絵の上達スピードが早くなることが期待できます。
スピードが早くなる理由は、デジタルならではの操作方法にあります。例えば、描く線を間違えたときに、アナログではゴシゴシと消しゴムをかけなければなりませんが、デジタルでは範囲選択でサッと消すことができます。また、大きさや位置を間違って描いてしまった場合も、アナログでは広範囲を消しゴムで消さなければなりませんが、デジタルなら選択して移動・拡大縮小することですぐに修正できます。
カラー模写を気軽にできる
アナログでカラーイラストを模写しようとすると、コピックや絵の具などが必要です。作業に広めのスペースが必要なだけでなく、色をそろえたり使ってなくなったりする分を考えるとおこづかいの心配も出てきます。なにより、一度塗ってしまった色はなかなか修正することができません。
それに対してデジタル模写であれば、好きな色を使い放題で、場所も取りません。画材を塗った後に乾燥時間を待つ必要もないのです。
練習した絵を整理しやすく、あとから見つけたり振り返ったりするのが容易
デジタル模写ならば、練習結果はデジタルファイルとして残ります。ファイル名に日付を入れておけば、日付順にファイルが並ぶので管理がしやすいです。
フォルダ分けも自由自在で、あとから手軽に管理方法を変えることができるところも魅力です。もしこれがアナログであれば、紙をファイリングしなおしたりして時間をたくさん使わなければなりません。
場所をとらない・かさばらない
デジタル模写ならば、練習結果はデジタルデータなので、紙と違って練習の記録がかさばりません。そのため、保管用の箱や棚もいりませんし、ちらかって部屋が汚くなることもありません。
さらに、ファイル名に日付を入れておけば、日付順にファイルが並ぶので管理がカンタンです。
また、DropBoxやGoogleドライブなど、クラウド上に保存しておけるサービスを使えば外出先でスマホなどを使っていつでもどこでも見ることができる環境を構築できます。
デジタル模写のやり方
デジタル模写のやり方は、アナログの模写とほぼ同じです。お手本を見ながら、絵を描き写していくだけです。ただ、アナログとの違いはペンタブレットなどを使って、デジタルデータ上に描き写していくということです。
代表的なやり方をいくつか紹介しましょう。
本などを見ながら、デジタルな道具で模写する
スタンダードなやり方がこれです。漫画本や画集、ポスターなど、紙に印刷されたものをお手本にして、デジタルな道具で模写をしていきます。インターネット環境がないところでもできるのがメリットです。
インターネット上の画像を同じ画面で模写する
インターネット上の気に入った作品をディスプレイに表示し、それをデジタルな道具で模写する方法です。スポイトツールで色を確かめたり、お手本と模写した作品を重ねて違いを確認したりできるところが便利です。ただし、画面上にお手本と描画用のスペースが必要になります。大型のディスプレイを使うか、ディスプレイを2枚使うのがオススメです。
スマホやデジカメで撮った写真を取り込んで模写する。
上の方法に少し似ていますが、スマホなどで撮影した画像データを模写する方法です。外出先で素晴らしい風景を見つけたときや、街中で気に入った絵を見つけたときに撮影しておけば、模写のお手本にすることができます。
デジタル模写をやるためにそろえる道具
以前はPCとペンタブレットのセットが王道でした。しかし現在は、スマホやタブレットの高機能化や、液晶タブレットの低価格化が進んでいますので、いくつかの選択肢があります。下の表にいくつかの組み合わせをまとめてみました。
道具の組み合わせ | 価格 | スペック | 持ち運び | 制作 スピード |
PC+ペンタブレット(板タブ) | 中 | 高 | 低 | 中 |
PC+ペンタブレット(板タブ) +サブディスプレイ | 中 | 高 | 低 | 高 |
PC+液晶ペンタブレット(液タブ) | 高 | 高 | 低 | 高 |
タブレットPC+スタイラスペン | 中 | 中 | 高 | 低 |
スマホ+スタイラスペン | 低 | 低 | 高 | 低 |
液晶タブレットはもともとサブディスプレイのように使用するので、ディスプレイを買い増ししなくても良いところにメリットがあります。また、作業速度ならキーボード等でツールの切り替えができる板タブや液タブが有利です。
スマホやタブレットを使う時のメリット・デメリット
スマホやタブレットは持ち運んでどこでも模写することができます。スケッチブックのように持ち運んで風景の練習をするのも良いですね。
ただし、スマホやタブレットにはデメリットもあります。それは、画面が狭いことです。1つの画面上で模写対象と描画画面を同時に表示すると作業スペースが狭くなり、模写をしにくくなってしまいます。そのため、紙に印刷されたお手本をセットで持ち運ぶことが基本になります。
また、スマホやタブレットは、PCに比べてファイルの管理の自由度が低いことも覚えておきましょう。
結局、デジタル模写に最適な道具は?
もしあなたがデジタル模写用の道具を全く持っておらず、これからそろえようとしているのであれば、「PC+ペンタブレット(板タブ)」をそろえることをおすすめします。この組み合わせならば、本番の絵を描く時にも処理速度不足になりませんし、スペックが標準的なものを、コストを抑えてそろえることができます。また、ディスプレイを増やしたり、ペンタブレットをグレードアップしたりと、要望に合わせて拡張していくことができます。やはり現在も、王道はこの組み合わせということですね。
もし手軽にやりたいとか、持ち運んで別の場所でも練習をしたいとか、屋外でスケッチをしたいということならば、「タブレットPC+スタイラスペン」をおすすめします。
デジタル模写にデメリットはあるの?
デジタル模写をすることで不利益を受けることはありませんので、デメリットと言えるものはありませんが、注意事項のようなものはあります。デジタル模写をするときはこれらのことを意識しながら行いましょう。
アナログ特有の技術は身につかない
紙に直接描写する技術は、デジタル模写だけでは完全に身に着けることはできません。もしかして、「自分はデジタル一本でいくから問題ない!」と思っていますか?紙に描かなければならない場合は意外とあるのです。例えば、同人誌即売会などのイベントでは、ファンからスケッチブックや色紙に描くことを求められたりすることもあります。アナログはアナログで、ある程度は練習しましょう。
バックアップは必須!
デジタルデータの宿命ですが、ファイルの操作ミスで消してしまったり、パソコンがクラッシュしたりすると一瞬で模写した作品が消えてしまいます。ですから、普段からこまめにバックアップしておく必要があります。
USBやSDカードへのバックアップだと、壊れて消えてしまうこともあります。ですから、ドロップボックスやgoogleドライブなど、クラウド上に保存できるサービスを利用しましょう。
まとめ
デジタル模写にはたくさんの長所があり、画力を短期間で向上させたい人に最適な練習法と言えます。本日お話ししたデジタル模写の特徴を最後にまとめてみましょう。
- 模写量を増やせるので、絵の上達スピードが早くなる
- カラーイラストも気軽に模写できる
- デジタルデータなので模写した作品を管理しやすい
- いまから道具をそろえるのなら、おすすめは「PC+ペンタブレット(板タブ)」
- データ消失に備えて、データはクラウド上へ保存しよう
チュンすけ
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